コロナ禍のビルドゥングスロマン
小説にはビルドゥングスロマンと呼ばれるジャンルがあります。知ったかぶりでビルディングロマンと発音する人もいるようですが、これは間違い。英語ではなくてドイツ語のBildungs romanですからね。
直訳すれば「教育小説」、日本では一般に「教養小説」と訳されています。若者が精神的に成長していく過程を描いた小説なので、意味的には英語のビルディングでも似たようなものじゃないかな。ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスター』を中心として、それに類した作品群の概念をドイツの哲学者ディルタイがこのように表現したとウィキでは紹介されています。
あはははは、ボクは一冊も読んでいないのでホントは何も言えないんですけどね。トーマス・マンの『魔の山』も、この系譜だそうです。若い頃は翻訳小説がどうにも馴染めず苦手だったので、まったく不勉強の極みですが、こちらも読んでおりません。
しかしながら、ビルドゥングスが「教育」=「自己形成」の意味であるなら、J・K・ローリング女史が失業中に書き始めたといわれる『ハリー・ポッター』シリーズもまさしくそうですよね。映画の『スパイダーマン』だって同じです。漫画大国の日本でも、長編作品の多くは成長物語といえるじゃないですか。やはりろくすっぽ読んでいないのですが、『ヒカルの碁』とか『JIN』などなど。ストーリーどころか設定すら知らないのですが、目下大流行中といわれる『鬼滅の刃』もそうした要素が必ず含まれているはずです。
よくもまぁ読んでいない作品ばかりをズラズラ並べて論評できるものだと、我ながら呆れてしまいますが、そろそろ新型コロナ禍での教養小説あるいは成長物語が求められている気がしてならないんですよね。もしかすると、その兆しが『鬼滅の刃』なのかな。
総理大臣がモソモソと紙を見て読み上げるタテマエよりも、都知事の一方的なお願いなんかよりも、小説あるいは映画やテレビドラマのほうが若い人たちの心に届くんじゃないかなぁ。深い感動とともに、自分自身の生き方を主人公と一緒に学んでいく。それがビルドゥングスロマンであるなら、このパンデミックの時代にこそ求められていると思うんですよね。
ボクも『コロナの夜に』という仮タイトルだけは作ってみたのですが、何しろネットを介した出会い経験が皆無であり、ジーサン&バーサンの熟年恋愛くらいは描けても、今の時代性をリアルに読み込むのはもはや困難なのであります。
今年の芥川賞と直木賞は、そうした成長小説が選ばれたのでしょうか。こちらも読んでいない、というより賞自体に興味がないのですが、文壇の大御所が最終選考する小説なんかより、長編漫画に期待したほうがいいんじゃないかな。
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