文化もナニカになる
このところ取材で忙しくて、このブログも何となく余裕のない文章になってきました。それでもセレンディピティみたいな出会いがあって、昨日のテーマにした文化についてもう少しだけ。
取材の都合でたまたま久しぶりに、東京・八重洲のブックセンターに顔を出しました。相変わらず充実した大型書店でしたが、2階のビジネスの棚が一番スゴいですね。ああすれば儲かるとか、こうすれば部下はついてくるとか、ビジネス・ノウハウに関する本がズラリと並んでおり、ちょっと閉口してしまうほどです。
売れるから、その種の本がどんどん増えていくわけで、不況で先が見えなくて、みんな不安なのだなあと実感させられます。その本を読んで出世しようというより、自分だけおいてきぼりになるのではないか、みんなに遅れてはいないかという怖れのほうが強いのではないでしょうか。
あたかも本棚から著者の皆さんが顔だけ出して、「ああしなさい、こうしなさい」と大きな声で呼びかけているように感じました。
でもね、ちょっと引いて見直せば、このブックセンターは7階建てで、このビジネス関連は2階のワンフロアに過ぎないのです。つまり、7つあるフロアの1フロだけがビジネス関連ということで、ビジネスなんてボクたちの文化の7分の1を占めているだけなのです。
こういう感覚は、アマゾンでも、キンドルでもiPadでも感じられない、リアルな紙の書店だけで得られることでしょう。デジタル化されると、出版点数をデータ化して見直さないと分からなくなります。
それで考えたのは、これまで社会人の「ナニカ」を専門分野やスキルから追い詰めてきたのですが、文化だって「ナニカ」になり得るのではないかということです。
哲学でも宗教でも心理学でも歴史でも芸術でも物理学や数学だっていい。一つの専門を自分で決めて、ヒマがあれば読み続け、考え続けていくことも「ナニカ」にならないでしょうか。これは、ビジネスで直接的に役には立たないし、役に立たないほうがいいとも思います。郷土史だっていいし、クロアチアの文物でもいい。古代ギリシャやローマの文学だっていいじゃないですか。日本の歴史でも何だっていいのです。
何しろ相手は、7階あるうちの6階分もあるわけですから、ビジネス関連よりは幅広いわけですね。
そして、すぐに役立つ知識はすぐに古びてしまうのに対して、こういう教養はハナからタイムレスですから、少なくとも古びることはありません。何よりも、純粋に「知る喜び」や「考える喜び」があるじゃないですか。
現代があまりに効率主義、儲け主義に走っているからこそ、その真逆もありなのではないでしょうか。そっちに逃避してはいけないけれども、リタイアした時に残ったのは金儲けの方法と知識だけというのも、ちょっと寂しい人生ですよね。
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