ジュネーブサロン2011雑感(1)
昨年もそうでしたが、スイスで時計取材をすると、いよいよ中国の時代なんだと実感させられます。空港ではアジア人を見ればみんな「アー・ユー・チャイニーズ?」ですからね。ほんの5〜6年前は「アー・ユー・ジャパニーズ?」だったのに。
ついに中国がGDPで日本を抜いて世界第2位になったと発表された頃でしょうか、ホテルのテレビではCNNで訪米した中国国家首席の演説を延々と流していました。帰国してみると、日本では実にあっさりした報道で驚きましたが、アメリカと中国との関係はより緊密になり、それによって失業率も改善されるなんて内容らしくて、オバマも拍手していたのです。
もう日本なんてほったらかしですな。メじゃありません。それって、どこの国なんてことにまたぞろなっていくかもしれません。外国人から「和食とアニメの国だろ」なんて言われたら、きっと泣けてきますよね。
それはともかく、ちょっとの間、「時計の祭典ジュネーブサロン」の番外情報を続けようかなと考えています。
まず第1弾は、それこそ番外のGTEから。
これは「ジュネーブ・タイム・エキシビション」の略称で、昨年からジュネーブサロンとほぼ同日程で始まった時計展示会です。スイスにはバーゼルワールドと合わせて、すでに2つの歴史ある国際的な時計見本市があるのに、それにブツけてくるなんて、いい度胸していると思いませんか。
ボクはどちらかというと「判官びいき」なもので、今年も2回目が開催されると聞いて、ぜひ見に行こうと決めていました。ネット経由で申し込みを行い、今年の取材最終日の最後の予定にしたのですが、まあはっきり言って想像通りに質素な展示会でした。
ブースなんかも、幕張あたりで行われるマイナーな見本市のように、ベニア板で隣と区切っただけの感じです。とてもとても、ジュネーブサロンやバーゼルワールドとは比較の対象にもなりません。
出展社もごく一部を除いて知らないブランドばかり。聞いてみると「去年から時計を作ってみた」とか、「半分趣味で、こんなのこしらえたんだけど、どうよ」なんてね。当然のことながら、品質的にはまだ売りものにはできない試作品も少なくありませんでした。
けれどもね、だからこそ出展者は意欲的で熱気があり、前述の話もボクが進んで聞いたわけではなく、ソデを引くようにして説明された上で質問した結果です。
大リーグでいえば(あまり知りませんけど)、メジャーの2地区をバーゼルワールドとジュネーブサロンとすれば、マイナーの下の下の下で、いわば草野球の地区大会みたいなものでしょうか。だからこそ、スイスの時計産業の厚みはスゴいなあと思います。
2002年頃に、ある雑誌の別冊で時計のビジュアル事典みたいな企画に協力したことがあります。その時には120ブランドくらいあって、その9割程度を執筆した記憶がありますが、あまりに多くてホントにヘコたれました。いちいち歴史や特長を調べなきゃいけなくて、大変だったのです。
それから時計人気が爆発的に沸騰して、新ブランドも続々登場してきたので、今ではファッション系も含めて、150から、ヘタすりゃ200あるかもしれません。
加えて、このGTEでは約60のブランドが出展していました。もちろん、ほとんどが無名で新参なので、いつ消えるか分かりません。要するにベンチャー・ブランドなのですけど、こういうエネルギーが実にアッパレだと思うわけです。
大昔に、バーゼルの時計フェアで小さなブランドを取材していた頃を思い出しました。あの頃は、高級時計がこんなに大きなマーケットになるとは、失礼ながら思ってもいませんでした。ところが、時計を作っている人たちは情熱に満ちていたのです。クォーツに崩壊寸前まで追いつめられた経験があるのに、時計と時計づくりが大好きで、その歴史に大変な敬意と誇りを持っていました。
そうした情熱が機械式時計の人気を復活・開花させた原動力だとするなら、GTEがいかにショボかろうとも、その意気が不滅であることを如実に示しています。大きな会社でなくても、オレたちでもっといい時計が作れるんだ、とね。
翻って日本ですけど、これほどに愛情と誇りを持てて、若い人が続々と参入したくなるような伝統産業がどこにあるでしょうか。そのせいか、スイスの時計会社で働く日本人が絶対数は僅かですけど、増えているようです。
ハイテクや最先端技術ももちろん重要ですけど、時計のように世界に売れるような伝統産業を国内でちょっと見直してみたいなと思うのです。
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