イメージ・ロンダリング
ある大学院の取材で、「イメージ・ロンダリング広告」の話を聞きました。ブランドや特定の商品・サービスをアピールして購買意欲を刺激するのでなく、企業のイメージをソフトにアピールして好意を持ってもらうことが目的です。
この「ロンダリング」とは「洗濯」の意味で、日本では「ランドリー」なのですから「ランドリング」と言うべきだと思いますが、こちらは「マネー・ロンダリング」という用語がもとなので、そうなってしまったのでしょう。おカネを洗濯機で洗うことを意味するわけではありませんからね。
衆知のことでしょうが、マフィアなど「反社会的勢力」が裏で稼いだ非合法のカネを「洗浄」することを「マネー・ロンダリング」と言います。ボクが敬愛するオーストラリア在住の森巣博氏の小説には(個人的な注釈の多い小説ですけど)、カジノで不可解な賭け方をするギャンブラーによるロンダリングが描かれていました。実は隠れた相方が同じテーブルに参加しており、目立たない金額を賭け続けて、彼が最終的に勝つように負けていたのです。
合法のカジノのキャッシャーをアングラ・マネーが経由することで、正規の勝ち金として生まれ変わるわけです。
とまあ、「ランドリー」と違って「ロンダリング」の語源は決してゆかしいことではないのですけど、それにイメージがくっつけばどうなるか。
もう分かる人は分かるでしょうけど、保険会社などが目立つわけですね。それでちょっと思い出せば、「未払い保険金」を金融庁が大々的に摘発したことがあったじゃないですか。
というわけで、「イメージ・ロンダリング」の必要があるからこそ、何をアピールしたいのかよく分からんけど「いい会社かも」と思わせる内容になっているわけです。
モノカキとして批判的に見ても、そうしたCM自体の完成度はおしなべて高いので、知らないうちに好感を持つ人も多いでしょう。だから、決して否定するつもりはありません。そういう広告だって、コミュニケーション手法としてはアリなのです。
ただし、だからといってCMの内容と会社の実態が必ずしも一致しているとは限りません。というより、消費者としては違うかもしれないという前提を厳守する必要があります。
こんなことはボクらの世代では常識的なことでも、現代はイメージの時代でもあるので、コロリとやられる可能性があるわけです。それを信じて就職を目指して結局は失望する若い人たちもいるかもしれません。
インターネットで時々は暴露や内部告発的な指摘もありますが、ボクたちはそんなに賢い存在ではないと自覚しておいたほうがいいでしょう。
同じように、政治家によるマスコミ批判を鵜呑みにするのも間違いです。記者からの質問はアホな内容もあるけど、鋭い指摘もあります。だから、ニコニコ動画やYouTubeといった、質問なしで一方的に話すだけのメディアを選ぶ政治家は絶対に間違っています。なぜ記者からの質問を避けるかを普通に考えれば、答は明らかではありませんか。
それに比べたら、最後までくだらない質問にも答え続けた海老蔵のほうがはるかに立派なヤツだとボクは思います。あのタイガー・ウッズだって、知り合いばかり集めた記者会見をやったくらいですから。
昔は新聞やテレビやラジオがメディアの主流でした。今では衛星放送からインターネットまで、いろいろとあります。だからといって言論が多様化したわけでもなく、要するに情報の蛇口が多くなっただけと考えるのはボクだけでしょうか。
メディアとは、メディアであってそれ以上でも以下でもない。既存のマスコミも社会のボクタクなんぞでは決してなく、情報を伝達するツールであり、国民の意識を映す鏡でもあるのですから、いろいろと共存するのが当然です。
日刊ゲンダイでは毎日のように「小沢擁護」をして、一般週刊誌や新聞では正反対。それでいいじゃないですか。選ぶのはおカネを払う読者なのですから。ボクはどちらかというと社会民主的な考え方を支持しますが、『正論』などもタマに読みますよ。
むしろ、いろいろないほうがヘンな状態であり、ましてやマスコミが批判されることでホクソ笑む人たちがいることに気づくべきだと思うのです。そういう意味でのリテラシー教育って、学校でちゃんとやっているのかなあ。
そういえば、「カウンター・インテリジェンス」なんていう言葉もあります。国際世論まで持ち出すとエラいことになっちゃいますが、どうもこのあたりが日本ってナイーヴなんですよね。
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