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福助くん その6

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福助くん その5

  • 赤いサルビア♪
    2010年秋の福助くん。とある週末に埼玉県所沢市にある航空公園に行ってきました!

福助くん その4

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福助くん その3

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福助くん その2

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福助くん その1

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2011年7月12日 (火)

「珍品堂モノ語り」(習作1)

「この店はね、元気な人には見えないんだよ」

 珍品堂、と書かれた看板、というより板きれと言ったほうが適切だが、その名前に惹かれてふと入った店の奧から、主らしい人の声が聞こえてきた。白髪まじりの頭から想像するに、60歳前後らしい。顔はまだよく見えない。

「どういうことですか?」

「普通の人は、こんな小汚い店に興味なんか持たない。だから見過ごしてしまう。けれども、時々あんたのようにフラリと入ってくる客がいる」

「何となく面白そうだなと思ったので」

「それだけではないだろう」

 確かに、それだけではなかった。ひどく疲れていたのだ。うまく社会に適応してきたと思いこんでいたが、どうやらそうではなかったらしく、昨夜はひどく悪酔いして、上司と激論してしまったのである。会社の業績も下降気味で、レギュラーだったはずの取引先を失った。それが私のせいだと、ヤツが指摘したのが理由だ。殴りこそしなかったが大声で「バカヤロー」だから、悪い印象を持たれたに違いない。

 それが後をひいてしまい、翌日は体調不良を利用に会社を休んだ。きっと今頃、上司はあの一件を社内で吹聴しているに違いない。それを想像すると、ますます気持ちが萎えてしまう。いっそ辞めてしまおうかと思いながらマンションを出て、フラフラ歩いているうちに、この店を通りかかったのだ。

「こちらは骨董屋さんなんですか。それとも古道具屋かな」

「そうでもあり、そうでもない」

「壷だとかの焼物系はほとんどありませんよね」

 そう言いながら目を泳がすと、古びた壁に掛けてあった絵を見つけた。目を凝らしてよく見ると、完成したジグゾーパズルだ。

「あれはジグゾーですか。でも完成したものなんて誰も買わないですよね」

 そう言いながら、ゆっくりとその絵に近づき、表面を指で軽く撫でてみた。

「これ、一つピースが欠けていませんか」

「ああそうか。それが呼んだのだな」と店主は言う。

「何だかいわくがありそうですね」

 そう訊ねると、店主は私の目をじっと見つめて、話を始めた。

 高校時代に意気投合して、親友になった2人の男がいた。1人は真面目な努力家だが、もう1人は要領良く立ち回る外向的な男だった。お互いに違う性格なので、逆にウマがあったのかもしれない。

 進学した大学も学部も違うのだが、つかず離れずで交流を続けてきた。真面目クンは卒業後に上場企業に就職。一方、外向クンは就活をナメていたせいで、卒業ギリギリになって中小企業に入ることになった。

 別々の会社に就職すると、普通は縁遠くなるものだが、彼らは年に数回は会っていた。

「いいよな、大手の会社は。オレのとこなんか社長がワンマンで大変だよ」と外向クン。

「給料は確かに悪くないけど、僕の大学のランクでは下っ端間違いなしで出世なんて無理だからさ」

 そんな日常が変わり始めたのは、意外なことに真面目クンが酒酔い運転で事故を起こしてからだ。

 真面目クンらしくないことだが、取引先とのトラブルで珍しく酒に走った。そんな時に親から連絡があり、母親の具合が良くないという。たまたま会社の営業車で帰宅していたことから、その車で2時間ほどかかる実家に向かってしまったのだ。事故は幸いにも電柱にぶつかった程度。違反も酒酔いでなく酒気帯びで、書類送検で済んだのだが、営業車を使っていた関係で会社は彼をあっさりと解雇した。

 その頃に、外向クンも危機に陥っていた。取引先に誘われて行った闇カジノにはまってしまい、数百万単位の借金を背負ったのである。真面目クンはいきなり会社のレールからはじき飛ばされ、外向クンも抜き差しならない。

「僕は真面目にやってきたように見えるかもしれないが、今度の件で、つくづく社会がひどく冷たいところだと分かった」と真面目クンは言う。すると外向クンも「結局は人をダマしたヤツが勝ちなのさ」と応じた。

 それで彼らは、いつか2人で会社を立ち上げるために、「オレオレ詐欺」に手を染めることにした。方法は闇カジノのマネジャーが紹介した男が教えてくれた。アガリの2割が条件だ。2人の目標は、半年で3000万円。それさえあれば、何か店でもやれるではないか。

 それから半年後に、真面目クンが社長で、外向クンが専務という会社が誕生した。仕事は、外向クンの会社が扱っていた部品の販売であり、当初はうまくいっていた。だが、不良品を納品したことで、会社の信用を一気に失ってしまった。

 しかし、その頃に彼らは、ある女性と知り合いになった。彼女は富豪の娘であり、うまく結婚できれば確実に逆タマになれる。そこで2人は真剣に相談した。どちらが、それを取るか。

「お前に譲るよ」と真面目クン。

「いや、彼女はともかく、あの親はオレよりお前を信用するはずだ」

 このあたりが親友同士らしい思いやりなのだ。まだ付き合い始めで、どちらにも好意を持っているようだから、1人に決めれば何とかなる。

「仕方がない。後腐れのないジャンケンにするか」と外向クンが言う。

「じゃ勝った方がモノにする権利を得ることにしよう。1回じゃ何だから、3回勝負な」

 深夜のバーで、人生を賭けた真剣なジャンケンが行われ、外向クンが勝った。

「僕はボロ会社と心中か」と真面目クンはため息をついた。

「心配するな。うまく行ったらカネを回すから」

 外交クンは持ち前の口説きトークで、短期間に結婚に至った。ところが、逆タマ亭主ではカネはそれほど自由にならない。親の会社に転職してから結婚し、豪邸に住んではいるが、親が死んで相続するまでは無理なのだ。

 その間に、真面目クンはますます窮地に陥っていった。

「カネはどうなった」

「まだ無理だよ」

 債権者からの厳しい催促で、真面目クンは再び「オレオレ詐欺」に手を染めることに。だが、その頃は警察の監視も厳しくなっており、逮捕される恐れが出てきたので、真面目クンは夜逃げを決心した。

「そんなわけで、しばらく海外に逃げるよ」

「大丈夫か。すまないなあ、オレが勝ったばかりに」

「高校の頃に、退屈しのぎで2人で作ったジグゾーバズルみたいなものさ」

「あれ、まだ持っているのか?」

「ああ。結局、僕はあのジクゾーからはじき出されてしまったんだろうね。最初の会社まではうまく嵌めてきたのに、ちょっと揺れたらポンって抜け落ちてしまった。それまでの苦労が水の泡だよ」

「そんなことはない。また、合わせればいいんだ」

「残ったピースは1枚しかないんだよ。だから、お前にこれをやる」

 真面目クンが広げた手の中には、1枚のジグゾーピースがあった。

 話はここで終わらない。外向クンは、妻との仲が次第に冷えてきたのである。酔った勢いで漏らしてしまった「ジャンケン」がショックだったらしい。真剣な恋ではなく、グーチョキパーで勝手に決められたのだから、これは無理もない。

 妻は別の男と浮気を始め、やがて離婚話に。そうなれば、外向クンは一気に何もかも失うことになる。その怖れと怒りとヤケもあって、ある夜に口論の果てに妻を包丁で刺してしまった。

「これが、そうだよ」と店主は、ポケットからシミのついたピースを出した。

「すると、このシミは血ですか」

「絵に嵌めてみたらどうかな」

 やってみると、ピタリと合うはずなのに何かが違うらしく、カチリとうまく嵌まらない。

「絵柄は間違いないが、ピースが歪んだんだろうな」

「いろいろな人生があるものですねえ」

「で、どっちを買う?」

「はあ?」

「このピースか、あの絵か。両方買っても、絶対に完成はしないが」

 未完成のジグゾーを飾る気もしないが、血のついたピースも不吉きわまりない。

「買わなければいけない、ということもないですよね」

「あんたには、こっちかな」と店主は強引にピースを押し付けてきた。

「いくらですか?」

「500円」

「そりゃ助かりますが、ちょっと安くないですか」

「その程度の小話だからな。これはあんたのお守りにしなさい」

 それが作り話だったのか、本当の話なのかは分からない。黒いシミも血とは限らないだろう。いずれにしても、私は翌日に出社して、上司に暴言を詫びた。

 おかげで会社というジグゾーのピースに、無事戻ることができたのである。

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