リストラと疾患
ある若い女性が「野田さんってバカなんですか? わざわざ朝霞の建築現場まで行かないと決断できないなんてヘンですよ。予算だけで判断できるじゃないですか。写真も図面も完成までの予定表もないんですかねえ」と怒っておりました。同感です。首相がいちいち現場に行っていたら忙しくて仕方ないでしょう。それとも何かの時間稼ぎなのかな?
さて、一昨日の続きです。
以下は、某医大学長の取材で紹介されたデータに基づいています。
ある海外のデータによると、リストラを免れた労働者は、運動器障害に関係する欠勤がその後2年間で5倍以上に増加したそうです。リストラされた側でなく、リストラはあったけど会社に残ることができた人たちが、腰とか足などの故障を理由とする欠勤が急増したということになります。
また、人員削減は腰痛や筋骨格系疾患の増加や早期死亡リスクを上昇させるというデータも発表されているそうです。
リストラされた方も大変ですけど、会社に残った人たちにも心理的な不安を与えるせいか、疾患や疾病を悪化させると読めるでしょう。
単純に考えても、リストラで整理解雇があれば、「次はオレかも」と将来が不安になるのは当然です。仕事の内容や立場にもよりますが、残れたからといって気分がいいはずがありません。そこでクヨクヨと考えているうちに、ウツにはならないまでも弱いところが悪くなるといえます。
逆に、笑うと免疫機能が強化されて、ガンの進行が遅れたり、中には消滅したというケースもあるそうですから、人間の「心理」というのは身体にも直接的な影響があるようです。そのメカニズムの完全な解明はまだ先のことでしょうが、臨床的には体験的な事実だろうと思います。
これらのデータから、どうやら経済危機や社会不安は、疼痛や疾患、早期死亡に対して影響を与えているのではないかと推測されているようです。
日本ではバブル崩壊までは終身雇用、年功序列が常識となっていました。終身雇用は別として、年功序列は今でも変わっていないとボクは認識していますが、少なくとも高度成長期の頃のサラリーマン映画(東宝など)を見ると、「無責任……」や「社長漫遊記」などのシリーズは底抜けに明るくて、いつ仕事をしているんだという感じでした。もちろん娯楽映画なので誇張やウソもあるでしょうが、現代のように沈欝な雰囲気はなかったように思えます。
その発展形が「モーレツ社員」であり、彼らがあれほど元気で丈夫だったのは、深刻な不安や悩みがなかったからではないでしょうか。
その一方で、社会不安が増加すると疾病や疾患が増えるなんて、「踏まれたり蹴られたり」ですけど、分からなくはありません。かといって、経営が危機に瀕して、会計の数字だけを見れば、人員削減はやむを得ない手段ではあります。だから仕方なく、となるのが普通ですが、それって本当に本当なのでしょうか。
たとえば、100人のうち10人を解雇するなら、その給料分をみんなで減額するという方法もあり得るでしょう。あるいは新たな分野に進出するなど、クリエイティブな方向での活路を見いだせないものでしょうか。それができないのであれば、以前にも書いたように、社長室には招き猫でも置いておくべきでしょう。
以前に、経済通といわれた財務大臣が「景気が悪いんだから仕方ない」と公言しました。ボクはそれ以来、この人を信用していません。こんなことは誰だって言えることですから、それで果たして経済通といえるのでしょうか。
話を戻すと、これらのデータは、安易なリストラは職場の意欲や士気、それに生産性の低下などを招きかねないという警鐘にほかならないと思います。その意味では、終身雇用も悪いことではないとなります。
しかしながら、安定を保証されれば健康になって生産性が上がるとは限りません。たとえば一般の公務員は頑張っているかもしれませんが、膨大な数にのぼる年金記録のミスがあったほか、特に官僚による既得権維持は国家や国民を無視するレベルに達しているような気がします。逮捕でもされない限り解雇はあり得ない労働環境が、必ずしも効率や生産性を高めるものでもないようですから、逆もまた真なりとはいいにくいようです。
難しいテーマですけど、こうした人間心理が身体や職場全体に与える影響を、日本でももっと組織的に広範囲に研究する機関が必要ではないでしょうか。それこそ臨床心理士や産業カウンセラーの仕事ではないかと思いますが、そのためには予算が必要です。だから、朝霞などの公務員宿舎新設は凍結でなくて完全中止にする。そのほかの無駄も排除して、浮いた分のいくらかを回しましょうよ。医療費の抑制にもつながるのですから。そういうことをするのが政治家だとボクは思っていました。
このブログで何度も指摘してきましたが、人間心理は21世紀の大きなテーマの一つだと思うんだけどなぁ。
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