軍隊と会社
誰に聞いたか忘れましたが、戦後の日本企業は軍隊をモデルにしていたそうです。ボクの専門外で詳しくは知らないので、その真偽の判定なんてとてもできませんが、似ているなと感じる部分はあります。
以前から新卒を短期一括採用するのはなぜか、と考えてきましたが、軍隊の新兵補充と考えれば理解できなくもありません。「リクルート」という言葉は、まさにそれが語源ですからね。入隊後に必要な基礎訓練をしなきゃいけないので、バラバラより一括したほうが何かと効率的なのは言うまでもありません。
軍隊は戦争するための組織ですから実力主義かと思えばそうではなく、たとえば陸軍士官学校や陸軍大学卒業後は早期からの幹部コースが約束されていました。『坂の上の雲』で活躍した秋山兄弟も、ウィキペディアによれば好古は大阪師範学校から陸軍士官学校、真之は大学予備門から海軍兵学校を卒業しており、どちらも海外留学に派遣されています。
軍と戦争に関する専門教育を受けた人が参謀や幹部になるのは当然と思えますが、徴兵された人たちにも学歴は機能していたらしく、ある時期までは「低学歴者にはない優位を与えられた」(「学歴・階級・軍隊」高田里恵子著、中公新書)とあります。しばしば陸軍は苛烈で、海軍はインテリっぽい印象で伝えられてきましたが、むしろ逆で、陸軍のほうが公平で海軍のほうが学歴を重視した待遇だったともいわれます。軍隊の思い出を語って世間に公表されるのは高学歴者がほとんどなので、つまりは海軍のほうが学歴社会で厚遇された結果ではないかと指摘する人もいます。
いずれにしても、軍事行動で規律が乱れれば集団戦闘には勝てないので、上意下達の指示命令系統の遵守は必須となります。かくて、元巨人軍の清武氏のような反乱や、内部告発なんてことも「まかりならん」となるわけです。
それでも、上からの指示や命令だけで人間は言うことを聞くようにはならないので、精神的なバックボーンと具体的な規範が必要です。それが愛国心と軍人勅諭であり、戦後は愛社精神と社訓、それに就業規則になったと考えられなくもありません。
それに従わせるアメとして終身雇用で身分を保障し、年功序列で組織の安定化を図ったと考えることもできます。
会社も軍隊も人間が集まった組織ですから、似ているのは当然としても、太平洋戦争時の米軍と日本の旧軍との際立った違いは、「降格」がなかったことだといわれます。これはミッドウェー海戦で大敗北した指揮官や参謀たちのその後の処遇を調べていただければ分かると思います。
それ以外に、海兵隊や統合幕僚本部など太平洋戦争時の日米の軍事組織には様々な違いがあるらしいので、調べてみると組織経営の参考になるかもしれません。
さて、こうして組織化された軍隊が、果たして現代のテロやゲリラ、そしてITによる謀略に勝てるのだろうか、というのがボクの本筋です。ベトナム戦争に米国は敗退したほか、イラクやらアフガニスタンは終息の気配を見せていません。これは戦争より政治の問題と考えるべきでしょうけどね。
要するに、重厚長大やインフラ産業に軍隊という組織構造は適しているかもれませんが、新しい企業、特に野中郁次郎氏が言う「知識創造企業」に適しているのだろうか、ということです。
これまでのような卒業段階での「人材囲い込み」と年功序列で、果たして知識が創造されていくのかなあと疑問に感じているわけです。むしろ、人材を「原価」ではなく「時価」で捉えた流動化の促進が活性化のポイントになるのではないでしょうか。少なくとも、学校を卒業してから一念発起して大学院でMBAを取っても、待遇がほとんど変わらないというのは、どう考えてもおかしい。
長くなるのでこのあたりでやめますが、新しい組織論と、それによる成功事例がそろそろ出てきて良さそうな時期だと思うんですけどね。
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