あったらいいな(続)
昨日のアイデアを発展させると、つまりはカーナビを超えた本格的な「ドライブ・コンピュータ」ということになります。1980年代前半に「ナイトライダー」というアメリカのテレビ番組が放映されており、スーパーカーに言葉を話す人工知能が搭載されていました。「敵が追いかけてきました。その角を右に曲がってやり過ごしてください」などと人間に指示を出すわけで、あんなクルマがあったらいいなと思ったものです。
今ではスマホに声で呼びかけるだけでネット検索してくれる時代ですから、必ずしも不可能とはいえないでしょう。そりゃ調べれば首都高速の混雑状況くらい分かります。ラジオだって放送しています。けれども、情報があまりにも多いと人間には手に負えなくなるわけで、これをうまく整理して、必要なことだけを音声で教えてくれる、とかね。
ここらで分かってこなきゃいけないのは、人間相手のメカやソフトであるのなら、もはや理科系の技術だけでは十分ではなく、何度も指摘してきたように、人間に精通した文科系も開発に最初から参加しなければいけないということです。製品化する時には美術系、音楽系の人材だって必要じゃないですか。
にもかかわらず、それらの専門領域が分断、あるいは孤立していることが、ボクは今日の最も大きな問題であり課題だろうと思うのです。
たとえば最新の機械式時計では、伝統的な職人技の世界に、機械工学と物理学の博士号を持つ科学者が参加しています。そのおかげで300 年以上も基本構造が変わらなかった調速脱進機構で、ヒゲゼンマイのないテンプが開発されているのです。時計好きなら理解できるでしょうが、これは革命的といっても過言ではありません。
その逆に、理工系分野に文科系が積極的に参加することで、新たなブレイクスルーや、より人間に近い機械が開発できるのではないかとボクは思うのです。
いま使っているワープロソフトにしても、どう考えても理科系の発想だなと感じるところが結構あるわけですよ。文章を書いて生活している人間から見ると、こうすりゃいいのに、ああすればもっと便利なのに、と不満はいろいろあります。しかし、こういう人間がワープロソフトの開発段階で参加しているのでしょうか。
仕事のプロセスとしては面倒くさい話ですけど、それをスルーして既存の体制で何とか新製品や新技術となるから、後追いが多くなるのではありませんか。
これからの日本が再び浮上するための課題は、やはり世界をアッといわせることだとボクは考えています。iPS細胞もそうですけど、そんなことを知財管理も含めて、たった1人だけで完全に実用化できるわけがありません。画期的な発見や発明をコアとして、それにどういう分野の知性や創造性を持つ人材を絡めて、どのようなビジネスにしていくかというチーム・ビルディングが、MBAにおける経営学の新しいテーマではないでしょうか。
そうした最新の代表的なビジネスモデルが、ノーベル賞の山中教授チームだとボクは思うわけですね。コトは個人的な新発見・新発明のレベルではなく、明らかに組織論の段階であり、だからこそカネがかかるということをもうちょっと理解すべきでしょう。にもかかわらず洗濯機を贈呈しようと呼びかけた田中真紀子センセの冗談というか思いつきは、茶番というより醜悪というほかありません。
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