価値観(上)
垂直分業であれ、電気自動車のような水平分業であれ、現代の仕事は一人の個人や一つの会社だけでは完結できないようになっています。
その大きな理由は、ボクたちのような文系仕事もそうですが、技術とコストのバランスですよね。たとえば本業でない部分の研究開発費まで面倒みると最終価格が跳ね上げるので外注するとか、あるパーツは他社に任せた方が高精度で品質が安定するとか。
こんな難しい言い方をしなくても「モチはモチ屋」のほうが分かりやすいですけど、その結果として最終価格が高くなるような分業などあり得ませんから、やはりコストダウンが背景にあることは誰だって分かります。
ただし、自社ですべてを賄わないということは、その会社が面倒を見切れない部分が存在するということです。それでも何か問題があれば、主体となる会社が責任を取らなければなりません。人間が数多く集まった会社も同じで、どこかで信じ切らないと仕事が進まないかわりに、予想もつかないトラブルや問題も発生するわけですね。
さて、分業にはつきものといってもいい、こうした予想外のトラブルを回避し、かつ製品の質や精度を確保するために、どういうことをしてきたのでしょうか。
ちょっと考えれば分かるように、「スペック」の厳守ですよね。サイズや重量だけでなく、精度や耐久性なんかまで綿密に決めておく。そうすれば間違いはないはずですが、製品が複雑で高度になればなるほど、パソコンの中に描いた設計図通りにいかない部分も出できます。それを「擦り合わせ」することが日本の垂直分業の優位性だといわれてきました。ところが、アナログの機械と違ってデジタル系の製品はそうした「擦り合わせ」の必要性がない。かくて日本の工業製品は新興国に負け始めたと指摘する人もいます。
実際に、アップルは昔から世界的な分業を行っており、たまたまマックのキーボードを裏返して見たら、メイド・イン・メキシコと表記されていて驚いたことがあります。「スペック」管理を厳重にしておけば、パーツを世界のどこで作らせても最終製品は均質になるという自信があったのでしょうね。
そうした国際分業の最高峰が、ボーイング787ではなかったのかとボクは考えています。しかし、就航直後からバッテリーなどのトラブルが続出して運航を停止。今もって再開には至っていません。航空機はスーパーハイテクの塊ですから、そうは簡単に行くはずがないことも事実でしょうが、やはり「何でだろう?
」と考えなければ前に進めないですよね。
そこで、メディア系のしがない下請け産業に過ぎないボクは、その背景に「価値観」の不一致を見るのであります。そんな情緒的なことではなく、あくまでテクニカルなミスと考えるほうが圧倒的な主流でしょうけど、どんな分業でも価値観を共有しておかないと、かくのごとくトラブルやミスが増加して、シナジーどころかコストアップの要因にもなりかねないということを、休み明けに証明したいと思います。
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