コンピュータにはできない仕事
すでにチェスでは1997年にコンピュータが人間の世界チャンピオンを破っていますが、ついに将棋もプロ棋士が負け越しという結果になったようです(第2回電王戦)。チェスは獲得した駒を再使用できないので、コンピュータが強くなるのは決して不思議ではありません。けれども、将棋はそれを再使用できる分だけ戦術の数が飛躍的に増加するため、当分は無理だろうと思い込んでいたのですが、どうやらクラウド的な方法で解決したようですね。
ボクは将棋もコンピュータもまったく素人であり、詳しく論評できるスキルや知識はありません。特に将棋では確か10手以内、時間にして僅か3分程度で負けた屈辱的な経験があるくらいです。それを見て「アホか」と言わんばかりに呵々大笑した相手のデカい面は今でも忘れられませんが、その程度の腕前にしても、サイコロを使わないゲームでコンピュータが人間に勝ったというのは衝撃的な事件だと思うのです。
あくまでも素人による推測ですけど、やはり「読み」の数を飛躍的に増大させるというコンピュータ特有の方法論が使われたのではないでしょうか。要するに、ある一手を打った後に相手がどのように駒を動かすかを先の先まで連続的に演算したのではないかと思うのです。その中で最も評価点の高い手を選択して、次の一手も同じように繰り返していく。前述したように将棋は持ち駒も使えるので、あまりにも膨大な数で人間にはとうてい無理な方法でも、計算の速度と容量が爆発的に進化してきたコンピュータなら決して無理なことではないでしょう。
とはいっても、「何だそうか」と安心してはいけません。将棋のように単純化されてはいませんが、人間がやっている仕事も、そうしたアルゴリズムを応用できることが少なくないと思うからです。すでに経理などのルーティンワークの多くはコンピュータ化されているので、いよいよ人間を雇用すべき仕事が本格的に減少していくのではないかというイヤな予感がします。
これまでも、ボクは何度となく機械化やコンピュータ化などを前提として、今後は「人間にしかできない仕事」を意識的にやらないといけないと指摘してきました。これからは、さらに発想にターボチャージャーをかけて「コンピュータにはできない仕事」を探さないとダメでしょうね。
どちらにしても同じ意味ではありますが、コンピュータを明確なライバルに設定することで、思考はより具体的になるはずです。たとえば今の段階では、コンピュータを搭載したロボットは人間らしい表情で微笑むことができません。研究自体は進んでいるようですが、そもそもロボットに人間的な表情を期待する人がどれだけいるだろうかとボクは思います。むしろ気持ち悪く感じるのではないでしょうか。
ということは、高級品などの接客業は当分なくならないものの、人間のくせに「機械的」な対応しかできないのであれば、コストが無駄なので解雇されやすくなる可能性も高くなってくるわけです。
教育も実は同じで、人間が教えるよりも優秀なソフトウェアのほうが分かりやすければ、学校や塾の教員は不要または減員が可能になります。もちろんすべての教科がそうなるとは思いませんが、そうなって初めて、人間が教えるということの意義や価値はどこにあるのかと考えるようになるはずです。
これは、インターネットによる遠隔学習の普及で集合教育が逆に見直されることと同じですよね。そこまで意識的ではない先生もまだ少なくないと思いますが、ボク自身は2002年に『インターネットでMBA・修士号を取る』(日経BP社)を執筆した時に、学校における集合教育の価値を再認識しました。
いずれにしても、そうした高度なコンピュータに人間が勝てなければ、どんどん仕事がなくなっていくでしょう。あるいは保守や点検など、コンピュータの奴隷的なお守りにならざるを得ないとかね。
さて、そこで自分自身に問いかけてみましょう。あなたは「コンピュータにはできない仕事」をやっていますか?
※なお、明日は早朝から取材があるほか、翌日から恒例のスイス出張となりますので、このブログはしばらくお休みとなります。連休真っ最中の5月2日から再開する予定ですが、途中で気まぐれにアップする可能性もあるので、たまにはチェックしてみてください。
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