鳩よ!
かつて『鳩よ!』という面妖なタイトルの月刊誌が刊行されていたことがあります。『平凡パンチ』『an-an』『ポパイ』に『ブルータス』とヒット雑誌を次々に生み出してきた平凡出版が1983年にマガジンハウスと社名を変更。その年の12月に創刊された詩の雑誌です。
ボクは自慢じゃありませんが詩人くずれでございまして、『現代詩手帳』(思潮社)や『ユリイカ』(青土社)などに投稿したこともあります。見解の相違があったのか、作風が嫌われたのか(負け惜しみです!)、掲載されたことは一度もありませんけどね。
そんなポジションから見れば、若者の流行を煽りに煽ってきた出版社が突然に文芸方面にも色気を出したとしか思えなかったので、「へっ、しゃらくせえ」というのが正直な感想でした。カタカナの今風な社名に変えておきながら、『鳩よ!』という誌名もないだろうと。
こりゃもう絶対的にアルチュール・ランボーと中原中也の特集をやるだろうと予測していたら案の定だったことも失望に輪をかけることになり、「ミーハーの極み」として、これまた自慢ではありませんが一冊も買ったことはございません。
しかしながら、ボクが推奨する物事はおよそヒットしないことから分かるように、嫌ったり否定する物事はほぼ確実に流行しちゃったりするんですよね。ちょっと調べてみたら、『鳩よ!』も2002年5月号をもって休刊となっていたので、驚くことに20年近くも続いていたわけです。
どれだけの発行部数があったのかは知りませんが、創刊休刊が活発な雑誌界にあって、よくまぁそれだけ続いたものだと感心します。しかも詩の雑誌ですからね。インターネットの21世紀になってから休刊に至ったというのも、何だかシンボリックではあります。
でも、そろそろ再び、新しい時代にふさわしい詩の雑誌が登場してもいいような気がするんですよね。技術革新と経済効率の追求というギスギスした現代社会に疲れている人は、想像以上に多いような気がするからです。人間が本当に疲労するのは肉体ではなく精神や心であって、それを癒やすのは言葉しかないではありませんか。
ところで、『鳩よ!』というタイトルにどんな意味があったのでしょうか。一冊だけでも買っておけば良かったと今さらながらに後悔しております。
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