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2018年5月22日 (火)

Do the right thing

 

 世間で大騒ぎになっていることはなるべくテーマにしないと決めてきたのですが、日本もアメリカナイズされてきたなぁと呆れざるを得ません。アメリカンフットボールで起きた事件ですから当然ともいえるのですが、日大の監督が指示したとされるルール無視のラフプレーなんて、それこそアメリカの映画やドラマで何度となく描かれているんですよね。

 

 ゲームが終わった後にしても、ミスした選手がチームメイトから凄絶ないじめを受け、悪質な感染症で死んでしまうドラマがありました。それを刑事が調べていくうちに、どうやらコーチが指示したと分かるんですよね。勝利至上主義のアメリカでは、おそらく試合中も観客席から「殺せ」ではないにしても「壊せ」くらいの物騒な掛け声が飛ぶことも珍しくないんじゃないかな。

 

 その反面で、仮にタテマエだけとしてもキリスト教がブレーキになっているせいか、良心との葛藤に悩む選手が必ず登場してきます。チームなんだから監督やコーチの指示に従わなければならない。さもなければ総力を効果的に集約できないので、それに抵抗することは即ちチームみんなへの裏切りになってしまう。けれども、その指示にはどうにも納得できないし、そんなことはしたくない……。

 

 セットが終わって無防備になったクォーターバックの背後から強烈なタックルを行った日大の選手も、そうした葛藤があったはずです。しかしながら、日本には個人の倫理や道徳を支えてくれる宗教が普及しているとはいえません。このことからキリスト教圏の欧米を「罪の文化」として、日本は「恥の文化」ともいわれます。つまり、自分の内側に罪があるのでなく、その外側にある他人の眼や会社など組織の判断や評価が強い影響力を持つということです。いかに理不尽な指示だと思っても、組織内で誹りを受けたり孤立しないために、敢えて間違ったことをしなきゃいけない時もあるでしょう。そんな時の便利な言い訳として「上司が」あるいは「組織としての」みたいな言葉が準備されているのですが、自分を捨て切った歯車のような人材が優秀とされてきたのは20世紀までじゃないかなぁ。

 

 現在の大学教育は、アクティブラーニングが象徴的ですが、講義を黙って聴くのでなく、主体的な思考力や行動力を育成しようとしています。もはや追いかけるべき先進国なんて世界のどこにもないので、日本自身が新しい産業や社会モデルを創っていくほかありません。そのためには、指示待ちの歯車ではなく、自分から問題を発見して解決していく人材が必要なのです。言い換えれば、出力は小さいにしても、1人ひとりがエンジンであることが求められているのではないでしょうか。

 

 そうはいっても、ピラミッド的な組織社会ではまだまだ通用しないこともあるはずです。だからこそ、より生き良い未来を創ろうというなら、学内にそんな理不尽や不条理を持ち込んではいけない。スポーツだって、フェアプレイのサンクチュアリ(聖域)であるべきです。プロになれば、いろいろと大人の事情があって、なかなか理想を追求しにくいですからね。

 

 にもかかわらず、あのような事件が起きてしまった。まだ明らかにはなっていませんが、仮に監督が極悪非道な指示をしたとしたら、選手の側の葛藤にもボクは注目してしまうんですよね。そんな命令に従う前に、彼だけでなくみんなが「監督、そんなのおかしいですよ」と抵抗すればいいのに、どうしてできなかったのでしょうか。社会に出たらなかなかできないことでも、大学スポーツだからこそ、そうした反発があって然るべきじゃないかな。封建社会にだって「逆命利君」という言葉がありました。自ら考えて発言することができなければ、それは奴隷に等しいではありませんか。

 

 だから、どうせアメリカナイズするなら、“Do the right thing”という合言葉も真似しようよ。「正しいことを為せ」という呪文をみんなが心の中で呟くことが、このような悲しい事件を再発させない最も有効な対策だとボクは信じるのであります。

 

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