洗脳(後)
昨日の続きになりますが、「洗脳」の何が不愉快かというと、他者に責任を転嫁する言い換えに聞こえてしまうからです。
人間から意思を完全に奪ってマインドコントロールすることが、本当に可能だと思いますか。どう考えても催眠術や恋愛と同じで、自らトリコになるというか、それを受け入れる土壌がなければ無理ってものでしょう。
カルト的な宗教が典型的ですが、入信のきっかけは身体的あるいは精神的な苦悩からの逃避だと思うのです。解決不能な大事であればあるほど、個人では対処できなくなります。そこで帰依、すがると言うのかな、自分を放棄して、すべてを委ねてしまう。そのほうが楽になれるからです。
実は「騙された」も洗脳の類語ですけど、ボクはそうした「された」という受け身の表現が大っ嫌いなんですよね。いかに奇妙な教義であれ、違法でない限り人は信じる自由があります。その人権を認めるのであれば、洗脳なんてことを軽々しく言えるはずがない。早い話が、自分の意思で従属・隷属したのであって、それを安易に洗脳と言い換えることに疑問を感じるのです。人間のアタマって、そんなに簡単に塗り替えられるほどヤワで単純なはずがない。
けれども、激しい苦痛や解決不能な苦悩、大変な困難に直面すると、どこかに逃げ出したくなります。そんな時に、美味しそうな餌を付けた釣り針が降りてくるんだよな。我慢できずにパクリとやると、向こう側に釣り上げられてしまう。そこで自由な意思を喪失して、誰かに、あるいは何かに受容されることの快感を知るわけです。
束縛や被支配という自覚さえなければ、これほど甘美で安楽な状態はありません。何よりも、いちいち自分で考え、判断し、選択しなくていいからです。こういう状態を「洗脳」というなら、狂信的な愛国者や会社人間も大きな違いはありませんよね。旦那の言うことには100%賛成で疑問をまるで持たない奥様も同じといえば叱られるかな。
とにかくね、他者のせいにしてはいけない。自分の生き方は、どうひっくり返っても自分だけのものです。それを自ら放棄して他者に完全に依存することを「洗脳」と呼ぶのではないでしょうか。この言葉をどうしても使うとすれば、自分で自分を洗脳したということになります。子供は別ですけどね。なのに、いつも「洗脳された」と被害者のように受動態で語られる。そこのところがね、ボクは限りなく気分が悪くなるのです。同調圧力の正体だって、いじめる奴にしても同じことなんだよな。
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