下町のマリア
ボクはキリスト教徒ではなく、聖書もまともに読んだことはありませんが、「下町のマリア」に惹かれてきました。
無私で公平、苦しむ人なら誰でも慈しみ、限りなく優しい心で寄り添おうとする女性。でね、親の虐待でどうしようもなく心が捻くれてしまい、粗暴で卑劣極まりない生き方をしてきた悪党をたまたま匿ったことで淡い恋が生まれる。けれども、その男は本気で彼女に惚れてしまったがゆえに、無垢な誠意を踏みにじって風俗に売り飛ばしてしまう。なんていうストーリーを考えたこともあります。もちろん続きもあって、それでもなお彼女は男のために神に許しを請い続け、お互いにズタズタのボロボロになった状態で再会する。明るい未来なんか絶対に描けない過酷で凄絶な境遇でも、2人は愛し合うことができるのか、みたいな展開で人間性を試そうと思ったわけですな。
それがハッピーエンドになろうが悲劇で終わるにしても、「下町のマリア」は男が想う究極の女性像ではないでしょうか。だから、そんな女性は世界のどこにもいるはずがない。女性にとっても、そんなことを期待されるのは迷惑このうえないですよね。
でも、ああ、ところが、現実にいたんだよな、それに近い女性が。大学教授の三女として山の手で裕福に育ったにもかかわらず、敗戦直後の隅田川・言問橋周辺で生まれた「蟻の町」と呼ばれる集落に身を投じて奉仕活動を行った北原怜子さんです。元ヤクザが仕切る廃品回収業の家族が住む地域で献身的な奉仕活動を行い、特に子供たちの教育環境の整備に尽力したとされています。このため「蟻の町のマリア」と呼ばれるようになり、海外でも報道されましたが、「財宝ばかりでなく、名誉や地位も悪魔的な誘惑だ」と取り合わなかったそうです(ウィキペディア)。忖度の強制や学者の集まりに横車を通して、権力や地位を誇示する前&現首相や、銅像や勲章を欲しがる政治家や社長にぜひ聞かせたいですな。
ものすごく残念なことですが、過労や無理が祟ったのか、彼女は何と28歳の若さで亡くなっています。神様なんてホントにいるのかよと腹が立ってくる無情な仕打ちですよね。しかしながら、それから半世紀以上も経た今になって、ボクのような三文ライター、いや百円ライターが彼女の存在を再発見したのであります。
人生は儚いほど短く、肉体は必ず滅びますが、彼女のような美しい心と善行は人伝てとなって永遠に残ります。そのために命が与えられているとみんなが考えれば、少しは生き良い社会になるんですけどね。
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