郵政省(後)
とっくの昔に消滅した郵政省についてグチグチと書くのは憚れますが、よくよく考えてみれば、電信電話から電波行政、そしてインターネットやWi-Fiなど最先端の情報通信を管理していたんですよね。テレビ局だって同省の免許事業ですから、ヘタに逆らえば放送停止だってあり得る、実は怖い官庁なわけですよ。民主主義の目と耳、そして口=電話やSNSまで包含する行政権力を持っていたとも言い換えられます。
現在では総務省に移管され、日本電信電話公社も民営化されてNTTとなりましたが、その権限はきっちり継承されています。「総務」というごった煮的な名称に幻惑されますが、かなり注意すべき官庁ではないでしょうか。
大げさな前ふりをしてしまいましたが、日本語英語で対訳した外国人向けの郵便手続きパンフレットを作ったことがあります。海外への宅配便みたいものも含めると、結構な種類があるんですよね。それを日本語で解説するのは造作もないことですが、問題は英文です。専門の翻訳会社に依頼し、英語ネイティブが校正するので安心していたのですが、「前置詞が違う」という修正が入ったのです。「ネイティブがチェックしたのですが」と伝えても、どうやら上のほうからの指示らしく、とにかく直してくれの一点張り。ネイティブといっても文法の専門家とは限りませんが、郵便手続きの解説なんて日常的な英文ですからね。それを英語がセカンドランゲージの日本人が修正する。ものすごい話だと思いませんか。少なくともボクは、さすが東大卒の官僚様であるよなぁと感心してしまいました。
もうひとつ。NTTに関しても、1990年代末から電話代が異常に高いことを指摘してきました。ボクは95年に『インターネット・キャンパス』(日経BP社)で世界100大学のウェブサイトを紹介したのですが、当時はヤフー・ジャパンも存在せず、回線も通常のアナログ電話。大きな絵柄のトップページを完全に開くまでに30分以上かかることもあった時代です。イギリス在住の知り合いの外国人が下調べをしてくれたおかげで出版までこぎ着けたのですが、この時に電話代の比較となり、「日本はどうしてそんなに高いの」と驚かれました。デジタルのISDNも率先して導入しましたが、決して早くないクセに料金は高い。あの頃に比べれば、最近のネット環境は夢のような未来ですけど、それでも日本のスマホ料金は高いと菅首相自ら指摘しております。あの本を上梓してから四半世紀にもなりますから、その間にNTTとドコモがどれだけ儲けてきたか計り知れません。
諸外国のように通信費を安くできなかった理由がいろいろあるにしても、結局はインターネットで完全に出遅れてしまい、21世紀を20年ほども過ぎた今ごろになってデジタル庁の新設ですからね。既存の利権には聡いくせに、新しい産業を育成する発想に乏しい。これもまた日本の官庁の典型的な特徴ではないでしょうか。
そのほかにエピソードはまだまだありますが、繰り言になるのでやめます。ボクの社会批判や政治批判は理屈ばかりでなく、不快な実体験にもとづくものであると釈明したかったので、その一部を紹介することにした次第です。
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