エキストラ
アメリカのテレビドラマをケーブルのCSで見始めて10年ほどにもなるでしょうか。日本のそれとの違いはいろいろありますが、何よりもリアリティへのこだわりが強いように感じます。日本のテレビドラマは顔のアップを多用しつつも舞台に近い静的なイメージとすれば、アメリカはドキュメンタリーといえるかもしれません。テレビカメラは手持ちが多いので画面が揺れますが、それこそが現実的な視線ですよねという感覚です。この手持ちカメラは、刑事ものでの追っかけや格闘シーンで圧倒的な威力を発揮。まるで本当に殴り合っているような臨場感があります。
ところが日本の場合は据え置きが多いらしく、会話などは視点をスイッチして繰り返されるので、紙芝居的というべきか、動きに乏しいんですよね。ザブンザブンと波が打ち寄せる崖の上での告白&謎解き大会なんて、ある種の様式美とは言えますが、「ありえねぇ」と思う人は少なくないんじゃないかな。
それだけでなく、道具立ても全然違います。たとえば日本の医療ドラマでは、開業したばかりかよと感じさせる小綺麗過ぎる病院や、モデルルームのように整理された手術室が出てきます。ところが、アメリカでは使い古しの雑然さを大切にしているらしく、天井や壁などもほどよく汚れているのです。手術にしても、そこまで内臓や血を見せなくてもいいだろうというほど徹底的なので、気の弱いボクは目をそむけることもしばしば。世界的な有名俳優でも、患者役となったら平気で鼻からチューブを差し込むので、演出コンセプトそのものが違うというほかありません。
狙いはそれと同じでしょうが、エキストラの数も大きな違いではないでしょうか。どんな場面でも必ず複数のエキストラが映り込んでおり、意識して見ていると、時にはうるさく感じるほどです。それだけでなく、ちゃんと演技指導されているらしく、画面に映るかどうかギリギリというアングルでも、自然な雰囲気で仕事や立ち話などをしているんだよな。日払いでかき集められたアルバイトではなく、役者の卵みたいな人たちに違いないと思います。
いずれにしても、こうした背景があるからこそ、ドラマに深さと現実感が生まれ、主役や脇役が際立つわけです。映画『ゴジラ』でも、巨大怪獣の偉容を強調し、恐怖心をかきたてたのは、逃げ惑う多数の人々なんですよね。そうした感覚が今の日本のテレビに乏しいのは、やはりゼニカネの問題なのかなぁ。
ランキングに参加しています。お気に召したら、ポチッと↓