『ニュー・トリックス』
このところ、CSのAXNミステリーで放送されている『ニュー・トリックス〜退職デカの事件簿〜』を集中的に視聴しております。イギリス国営放送局のBBCが制作して2003年から放送開始したテレビ番組なので、ひと昔前のドラマという印象を持つかもしれませんが、これがなかなかイケているのでありますよ。
サブタイトルにあるように、退職した3人の元刑事が迷宮入り事件の解決に挑むというストーリーです。各人がスネに傷を残しているだけでなく、一癖も二癖もあるジーサンたちを率いる現役の女性警視も、誘拐事件の被害者救出で大失敗。彼女のために新設された未解決事件専門の部署に左遷されたという設定です。このため、単なる事件解決だけでなく、それぞれが人生で背負った痛みや後悔や悩みなどが暗示され、奥ゆきの深いドラマになっているんですよね。常にバイアグラを持ち歩く元プレイボーイのオッサンがいい味を出しているのですが、何よりも銃弾がバンバン飛び交い、派手な暴力沙汰が絶えないアメリカの刑事ドラマにはない落ち着きがあります。要するにアクションではなく渋い推理ドラマになっているので、イギリス流のユーモアやウイットも楽しめるんだよな。
蓄積された知恵と経験とコネまで働かせて難事件を解明していくので、年を取るのも案外悪いことではないと感じさせてくれるのも、このドラマの魅力かもしれません。そのせいか、調べてみると12シーズンまで続いた人気シリーズだったようです。ちなみに、タイトルの「ニュー・トリックス」は「老犬に新しい芸は教えられない」という英語の諺に由来。この新しい芸のことを「ニュー・トリックス」と呼ぶので、古いやり方しかできない元刑事への揶揄と敬意が込められたタイトルなのです。
詳しいことはネットを調べればすぐに分かるので略しますが、ボクが個人的に贔屓にしているのは、前述した元プレイボーイと、彼らを束ねる女性警視を演じるアマンダ・レッドマンです。彼女は2003年の時点でアラフォーというよりアラフィフに近い中高年ですが、頼りになるアネゴという雰囲気が好きなんだよな。規則を平気で破るジーサンたちを眼前にした時に見せる、呆れながらも慈しみを感じさせる苦笑いは、彼女だけの素敵な表情ではないでしょうか。
身長も体格も男並みなので、逮捕の際に犯人をぶん殴るパンチもかなり迫力があります。ボクはどうも、こういう男勝りのタイプに弱いみたい。オマケということで紹介しておくと、アメリカのテレビ番組『LAW & ORDER;性犯罪特捜班』のベンソン刑事もファンなんだよな。彼女も中高年で、大変に立派な体格をしております。そういえば、痩せていて好きなのはオードリー・ヘップバーンくらいじゃないかな。だから、ボクの好みだけに限定すれば、健康目的以外のダイエットに励む必要はまったくないので安心してください。あまりに太りすぎはさすがに例外ですけどね。
『ニュー・トリックス』の女性警視に話を戻すと、役者本人のことは知りませんが、性格がちょいとこじれており、妻帯者や子連れに惚れっぽいというのもいいじゃないですか。このため恋愛沙汰でもハラハラさせてくれるのですが、事件解決を縦糸として、こうした各人の私生活が横糸としてうまく織り込まれており、ドラマに陰影や立体感が生まれています。こういうワザが日本はヘタクソだと思うんですよね。せいぜい2時間程度の映画と違って、テレビのドラマは視聴率が高ければ長く続けられるはずなので、シナリオをもっと工夫できるんじゃないかな。
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