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福助くん その6

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    福助くん、9歳の秋です。 ちょっと長めの散歩をして、世田谷公園へ。 紅葉と福助をご覧くださいまし。

福助くん その5

  • 赤いサルビア♪
    2010年秋の福助くん。とある週末に埼玉県所沢市にある航空公園に行ってきました!

福助くん その4

  • 1 毎年恒例の・・・
    今さらですが、今年の花見の福助くん。ご近所の目黒川に行ってきました。

福助くん その3

  • 1 田舎に行ってきました!
    飼い主の田舎に行ってきた福助。うららかな春を迎えた大自然のなかで、いつもと違った表情に。

福助くん その2

  • 定位置
    平日は会社にいる福助。こんな感じの毎日です。

福助くん その1

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    笠木の飼い犬。甘えん坊でちゃっかり屋の8歳。雄。

時計

2016年11月10日 (木)

時計

 

時計よ おまえに

心あるならば

二度とないこの時を

過ぎないでおくれ

 

 1970年代に『アドロ』『サバの女王』などのヒット曲を連発したアルゼンチン出身の歌手、グラシェラ・スサーナによる『時計』のリフレインです。

 外国人らしい骨太な感じの声量豊かな女性なので、サビの部分では亡くなった尾崎紀世彦を思わせるような伸びと迫力があります。そんな彼女が、小さな声で秘かに囁くように「私たちのために、時計をとめて」(作曲:R.Cantoral訳詞:かもまさる)とロマンティックに始める歌です。やっぱ大人の歌は抑えめな「引き算」がなきゃダメですよね。

 

 そこからどんどん歌は盛り上がっていき、やがて冒頭のリフレインがクライマックスとなって、朗々と歌声を響かせることになります。そんなわけで、つきあい始めた頃の恋人たちは、自分たちの逢瀬がひとときでも長く続くように、「時間をとめて」と願わずにいられようか、いやいられない、となるのが普通です。

 

 けれども、それは「時計」の機能や守備範囲ではありませんよね。よしんば時計の針を止めたところで、時間が止まるはずがない。そんなことは全知全能とされる神様の領域なので、せいぜい教会や神社仏閣でお祈りするしかないでしょう。

 

 であるなら、時計は何のためにあるのでしょうか。

 

 ボクは腕時計も専門分野にしているので、常に時計の意味を考えてきましたが、多くの人が使い方を間違えているんじゃないかと思うのです。

 電車の発車時刻や飛行機の搭乗締め切りなどに遅れないために時計を見ると考えていませんか。ならば秒単位で正確であるべきです。だからこそ高精度のクォーツから、標準時刻電波を定期的に受信して修正する電波時計、さらには衛星電波受信という進化・発展も納得できます。これらの時計なら時報に秒針がピタリと一致する快感も得られるでしょう。

 

 にもかかわらず、高級時計とされる分野はゼンマイと歯車仕掛けの機械式がほとんどなのです。これがね、なかなか不思議な現象だと思いませんか。その理由を分析するとキリがなくなるので、時間の使い方に関する結論だけをお伝えしましょう。

 

 時計というのは、閉まりかけた電車のドアに走って飛び込んだり、息せき切ってタイムカードをギリギリの時間に押すためにあるわけではないと思うのです。もちろん、そうした使い方も個人の勝手というものですが、そんなことのために腕時計を見るなんて、それこそ「時間がもったいない」ではありませんか。

 

 ボクは、時計というのは時間を使いこなすために存在すると考えています。つまり「遅れない」ではなく、「間に合わせる」ためでもなく「慌てること」ことでもなく、むしろ「余裕を知る」ためにあるのではないでしょうか。

 

 仮に9時出社なら、ギリギリの5分前に駆け込むためでなく、1530分前に到着する。そうした余裕の時間を読むことが時計本来の機能だと思うのです。だからこそ秒針のない時分針だけの時計もあるわけですよ。

 厳密に1分1秒を争うような仕事は、技術革新が進展する現代だってそうそうありませんよ。にもかかわらず、自分を自らそうした状況に追い込んでしまうと、時計の意味がまるで変わってくるのです。

 

 もっと簡単にいえば「あと5分しかない」と焦るためではなく、「まだ15分もある」と知るために時計は存在するんじゃないかな。

 

 そのあたりを誤解している人が少なくないような気がするのです。

 

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2015年10月 8日 (木)

クロック

 

 ひと仕事を終えてしばらく経つと、ふと「あれはああいうことだったんだな」と概括できることがあります。そういう感覚を仕事中から明確に持つことができれば、もっと面白い記事を書けたのにと思うんですけどね。現場で取材して原稿に追われるという途上にいると、なかなかそうした大きな視点でモノを見ることは困難なのです。

 

 最近では、クロックのムックかな。腕時計に関してはおよそ20年にわたる取材・執筆経験があるのですが、掛け時計や置き時計といったクロックの記事は初めての経験でした。

 

 調べていくと、日本が太陽暦の導入後に初めて作ったのが掛け時計であり、初めて海外に輸出したのもそれだったんですよね。世界初のクォーツにしても、1968年に掛け時計、そして1969年に腕時計が誕生したという経緯になっています。当たり前といえば当たり前の話ですが、何かとクロックが先行していたわけです。

 

 では、クロックとはいったい何だったのかといえば、これはもう『大きな古時計』という歌にすべてが集約されています。「綺麗な花嫁やってきた、その日も動いていた、嬉しいことも悲しいこともみな知っている時計さ」という歌詞が象徴するように、時間を知るだけの機械ではなく、家族と生活の真ん中に存在していたといえるでしょう。

 

 それが腕時計の普及とともに、時間は家族みんなのものから個人のものとなりました。みんなが一緒に見てきた共通の時間は次第に影を潜めて、かわりに個々の時間がそれぞれに流れるようになったのです。

 

 かくて「大きなのっぽの古時計」は「今はもう動かない」状態になっても、誰も困ることはありません。でも、それでいいのかなぁと。家庭や会社の中で、みんながいつも見ることで思い出になっていく時計があってもいいですよね。

 

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2014年4月 7日 (月)

バーゼルワールド2014雑感(2)

 

 1月末に開催された国際時計展示会「SIHH(ジュネーブサロン)」ではなぜだか中国人の姿をあまり見かけませんでしたが、「バーゼルワールド」では例年同様に復活していたような気がします。これはボクの感覚比であって数字的な根拠はありませんが、前のブログで紹介したように、スイスの時計輸出先の第1位が香港、第3位が中国本土ですから(2013年度輸出額/スイス時計協会)、中国人を数多く見かけて当然という状況なのです。

 

 このためバーゼルワールドのウェブサイトも、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語に加えて、いつの間にか「中文」として中国語が併記されるようになりました。日本語はないのに中国語訳があることから、時計宝飾業界で重視されるマーケットであることは明らかです。昔は日本がそうした立場にあったはずですが、GDPで追い抜かれてしまったように、勢いを失ったことは間違いないですもんね。

 

 バーゼルワールドの会場はSIHHより広いので、中国人と接近遭遇することはほとんどありませんが、すれ違うことや、離れたところから視認することはしばしばありました。この時に思ったのは、同じような顔立ちのアジア人にもかかわらず、ボクたちはなぜ日本人とそれ以外を判別できるのだろうかということです。民族的なルーツは知りませんが、西欧人より鼻が低い平面的な顔つきや体型はほとんど共通していますよね。おそらく外国人にはまったく見分けがつかないはずですが、ボクたちはほぼ正確に識別できるではありませんか。だからといって、これはあくまで感覚的なことであって、その根拠や理由はよく分かりません。

 

 近隣に居住しているからこそ微細な違いを感知できるのだとは思うのですが、ではその微細な違いとは何でしょうか。それが単純に顔の形に由来するとしたら、ちょっと古い話ですが「中国残留孤児」も簡単に見分けられたはずです。

 

 そんなことを漠然と考えながら、ジャーナリストやカメラマンが集まるメディアセンターで休息していると、向かいのソファに中国人が座っていることがよくありました。購買力が大きくなれば、雑誌などのメディア関係者も必然的に数多くなるわけです。それでついつい彼らをじっくりと観察してしまったのですが、何となくボクなりに理解できたことがありました。

 

 微細な違いの正体は依然として不明にしても、「昭和」な感じがしたのです。ファッションや着こなしや、女性なら化粧や表情ですけど、そうした総体に何となく昭和の気配があるんだよなぁ。

 もちろん中国人のジャーナリストなんてごくごく一部の存在であり、昭和といっても戦前と戦後に分かれる長い時代です。それらをごっちゃにした感想なんて誤解や曲解の始まりにしかなりませんが、それでも昭和っぽく感じたのはボクの内なる事実なのです。

 平成という立場からの「上から目線」と批判されるかもしれませんが、そうした「途上」の感覚が戦後における昭和の本質であるなら、どんづまりの平成よりはよほど羨ましく思いますけどね。

 

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2014年2月10日 (月)

高級時計と中国

 

 宇宙戦艦トマト。

 どうですかオモロイでしょと提案する前に、ネットで検索してみたら何と274000 件。しかも、真っ赤なトマトを宇宙戦艦の底部にアレンジした画像までアップされておりました。

 

 だったら、宇宙戦艦トヤマ。

 これならどないやねんと調べてみたら、さすがにトマトより少ないものの、それでも4750件ありました。独創的なシャレというのはなかなか生まれないものですね。

 

 こんなアホなことばかり考えているボクですが、その一方で、今年のジュネーブサロン=SIHHで中国人をあまり見かけなかったことが気にかかっていました。

 

 このジュネーブサロンは、時計好きなら説明不要ですが、世界的な人気を誇るトップブランドが毎年1月下旬にスイス・ジュネーブに集って新作を発表する国際的な高級時計展示会です。どんなビジネスも同じだと思いますが、この展示会も21世紀に入ってから中国人のバイヤーやメディア関係者が顕著に増加。7~8人は着席できる丸型の食事テーブルで、ハッと気づくとボク以外はすべて中国人という体験をしたこともあるくらいです。耳に入ってきた話声を注意して聴いてみると、中国語ばかりだったので分かったんですけどね。

 

 GDPで日本を抜いて世界第2位になったのですから、高級時計が欲しいという層が急増しても決して不思議なことではありません。ポルシェやフェラーリなどの超高級車もかなり売れているようです。

 ところが、ボクだけの狭い見聞なのか、今年は中国人がいつもより少ない気がしたのです。祝祭日では最重要とされる旧正月(春節)が始まるということで、会期の途中からまるで潮が引くように一斉に姿を消した時もあるのですが、初日から気配をあまり感じませんでした。

 

 帰国後に「そういえばそうかも」と同意してくれる関係者もいましたが、実際のところどうなのかを掴みかねていたのです。それが2月7日付け日本経済新聞夕刊の記事で氷解いたしました。

 

 それによれば、スイス時計協会は2月6日に昨年の時計輸出額を2183400万スイスフラン(約2兆4742億円)と発表。これは前年比1.9%増であり、前年の11%増に比べて大幅に減速したとしています。約2%の増加なら上等じゃないかとボクは思いますが、その理由として国・地域別では最大の輸出先である香港向けが前年比で5.6%減、3番目に位置する中国本土向けでも前年比12.5%減になったことを挙げています。

 

 興味深いのは、この減速の背景であり、同記事によれば「習近平指導部の倹約令に加え、中国の消費者が海外の旅行先で購入する傾向が強くなっていることも影響しているようだ」と分析しています。巨額の賄賂や蓄財などで高官たちが逮捕され、不動産も週刊誌ではバブル崩壊寸前のように報道していますが、「倹約令」とは知りませんでした。

 

 それらがすべて本当とすれば(仕事柄で疑り深いのです)、中国では「こんな時期に高級時計の買い付けかよ」と顰蹙ものだったのかも知れません。その意味ではボクの体感はまんざら間違ってはいなかったようです。それにしても「倹約令」とはねぇ。

 

 江戸時代の「亨保の改革」でも倹約令が出されたと日本史にありますが、それって政策的に成功したのでしょうか。もしかすると日本のバブル経済最末期に聞いたことがある「ソフト・ランディング」を狙っているのかな。

 

 ちなみに、この記事によれば「輸出先の上位30カ国・地域でマイナスだったのは4カ国・地域だけで、世界全体では需要は旺盛」だそうです。「ちなみに」のついでに紹介すると、朝日新聞デジタルの「&M」というウェブマガジンに「時計の祭典ジュネーブサロン」としてボクのレポートが4回にわたって掲載されています。時計に興味のある人はぜひ参考にしてください。

 

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2012年6月21日 (木)

オリンピック

 そろそろオリンピックのロンドン大会が始まりますが、日本で東京オリンピックが開催されたのは1964年のことです。何しろ半世紀近い昔ですから、本や映像でしか知らない人のほうが圧倒的多数派でしょうね。

 おっと、団塊世代の皆様は中学・高校くらいの年齢だったはずなので、鮮明な記憶をお持ちではないでしょうか。

 ある雑誌から「オリンピックにおけるスポーツ計時」の話を書いてほしいという依頼があったので、いろいろと調べてみました。その結果、どうやら東京オリンピックを境にするとスポーツ計時の進化を説明しやすいことが分かりました。

 残念ながら1ページの文章量だったので、調べたことのほんの一部しか書けませんでしたが、あの頃の日本は本当にすごかった。特に初めて公式タイムキーパーとなったセイコーが、オリンピックのスポーツ計時に革命をもたらしたといっていいのです。

 オリンピックの公式タイムキーパーはダントツでオメガが多く、今回のロンドン大会はもちろん、2020年までオメガに決定しています。開催国の時計メーカーが公式計時を担当するという決まりなんてないので、東京オリンピックでセイコーが初めて選ばれるまでのプロセスからしてドラマチックなのです。

 さらに、東京オリンピックでは初めて本格的な電子計時が導入されました。この頃のクォーツ時計はロッカーくらいのサイズでしたが、これを小型化するなど短期間に画期的な研究開発を行っています。今から見れば無謀とも思える挑戦ですが、それをみごとに成功させたのですから、つくづく感心させられます。

 そうした成果が、1969年に発表された世界初のクォーツ腕時計「アストロン」になるわけですね。ちなみに、当時は定価で45万円という超高級時計でした。

 日露戦争もそうですけど、日本というのは追い付き・追い越すべき目標を与えられると驚異的なパワーを発揮するんですね。あらゆる意味において、その象徴が東京オリンピックだったのです。

 ああ、なのに今ではこのテイタラク。「いったいどうしたんだよ」と、あの頃の関係者は怒っているに違いありません。

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2012年4月 9日 (月)

大笑いの理由

 

 有料原稿のことはなるべく書かないと決めたのですが、つい自分で大笑いしてしまったので報告しちゃいます。とはいっても、その周辺ですけど。

 

 そもそも日曜日の夜にかなり欝屈して、1人で深酒したことが遠因です。翌日は締め切りだというのに、起床したらフラフラの二日酔い。にもかかわらず、アタマを絞って記事を作るというのは難行苦行というほかありません。

 

 もちろん、常に準備は万端というボクですから(???)、すでに日曜日にはストーリーを固めていました。モノカキというのは、文章の質もさることながら、締め切りを厳守することが永続的な信用になってきますからね。

 

けれども、「落としどころ」がなかなか見当たらない時もしばしばあります。二日酔いだろうが、心身ともに健やかだろうが、どうにも「決まらない」ことがあるのです。書いてナンボの商売ではありますけど、自分が納得できないようなものは出したくない。

 

 ただ、前述したように、話のアラスジみたいなものはほとんど完成していたので、その構成を見直しながら、ラストのあたりでつい笑ってしまったのです。

 

 内容を簡単に紹介すると、今年の腕時計の新作に関する原稿です。ちょっと前の「バーゼルワールド2012雑感」でもご紹介したように、今年は国際化を反映してか、GMTやワールドタイマーが目立ったように思います。GMTというのは、一般的に第2時間帯も表示する時計であり、海外ではメインの表示を現地時間に、もう1つの時間帯を日本にしておくと大変に便利という機構です。

 

 それに対してワールドタイマーは、世界各地の時間帯が一目瞭然で分かるという機構を備えています。要するに、24時間で1回転するリングに、時差の異なる世界24か所の地名を組み合わせておけば、地球の自転のごとく、それぞれの地域の時間が変わっていく仕組みなわけですね。

 

 これはあくまで機械式時計の話で、クォーツともなれば、もっと多機能な時計は少なくありません。クォーツは早い話が電子機器ですから、いろいろなことをやれちゃうわけですね。今では標準時刻電波を受信して、誤差を修正する電波時計が普及しており、テレビの時刻と腕時計の秒針がピタリと重なります。その元をたどると、10万年でやっと1秒の誤差なんていう超高精度なセシウム原子時計らしいのですが(もっと高精度の原子時計もあるようです)、光速を超えると時間の流れも変化するという説もあります。

 

 それはともかく、こうした電波時計は、電波塔から発信される標準時刻電波を修正の基本としています。世界にはそれがないという地域もあるほか、福島第一原子力発電所の20キロ圏内に電波塔があって、職員が退避したために送信が停止されたこともあります。およそ1か月後に復旧しましたが、その間は当該地域の電波時計は普通のクォーツになったわけですね。

 

 それが理由だったとは聞いていませんが、今年はセイコーから世界初の「GPS時計」が発表されました。GPS衛星の電波をキャッチして位置情報を確認、世界のどこにいようが直ちに正確な現地時間を表示するという革命的な新作です。

 

 

 GDP第2位の座は中国に譲りましたが、さすがは日本と胸を張りたい快挙ではありませんか。                                    

 

 とまあ、こんなことを考えていたのですが、紹介しなければならない腕時計を1本忘れていたんですね。それがフランク・ミュラーの「ブラック・クロコ・クレイジーアワーズ」だったのです。

 知っている人はご存じでしょうが、「クレイジーアワーズ」は時間を示すインデックスがバラパラに配置されています。1時の次は2時ではなく、普通の12時位置は8で、次に1、6、11、4などと続きます。時針はちゃんと次の時間に飛ぶのですが、まさにダイアルがサルバドール・ダリもびっくりの「クレイジー」なのです。

 

 ここに至って、ボクはアハハハと笑ってしまいました。決して技術の進歩を茶化すとか否定するわけではありません。ただ、精度追求の真反対にある発想として何とも面白いではありませんか。

 

こういう発想を生み出す余裕というか遊びが、おそらく明治維新以降の日本に欠けていたものではないのかなぁと思ったのです。

 

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2012年3月29日 (木)

バーゼルワールド2012雑感(終)

 昔と比べて、バーゼルワールドで急速に変わったのはメディア用の資料だと思います。ジュネーブサロンでも同様ですけど、近年はCD−ROMや小さなUSBメモリーに写真も文書資料も収められているので、相当に楽になりました。写真はインターネットから直接ダウンロードしてね、というブランドもあります。

 これは各ブランド広報担当の皆様のご努力の賜と感謝しております。

 以前は1日の取材だけで、紙資料とポジフィルムで手持ちのバッグが限界まで膨れあがるのが普通でしたから。加えてバーゼルもジュネーブも開催時期が重なっており、バーゼル取材を終えたら、写真と資料の山を旅行カバンに詰めてエンヤコラと電車でジュネーブに移動。そこでも資料が追加されるので、旅行カバンにうまく収納できたとしても、重量超過で航空会社に追加料金となります。これがまた高価なのです。そこで、現地の日通に依頼して別送便にするのが常識でした。

 このため、ジュネーブサロンの3日目あたりはホテルの荷物置場が段ボール箱で一杯になっていたのです。

 それが2009年から1月と3月の開催となったので、荷物の量はかなり少なくなりました。これはカメラマンも同様でしょう。2回に分けて行くより、1回のほうが経費的・時間的にはトクですけど、体力的にはやはり今のほうが楽ですよね。

 ちなみに、ということでボクの装備をご紹介すると、旅行カバンはジュラルミン製のリモワです。車輪を2個内蔵のタイプなので、決して大きくはありません。4輪ならもっと大きなタイプもあったのですが、放り投げられることもあるので、その時に外出しの車輪では壊れないかと危惧したのです。

 購入してから12年くらいになるので、歴戦の勇士という風情になり果てました。傷やヘコミや汚れはいくらでもあります。最初は「何も入れてないのにどうしてこんなに重いのか」と疑問を感じましたが、それだけ頑丈なんですよね。これだけ長く使えれば、完全にモトは取れたと思います。

 そのリモワで運ぶのは、必要最低限の衣類が中心です。たとえばワイシャツは日数+1日分(帰国用)。それに商売道具のパソコン関連品と、旅行用湯沸かし程度。カップラーメンなどは往路だけの荷物ですから、帰路はほとんど資料で埋め尽くされることになります。だから、あのサイズでも何とかなってきたのでしょう。

 さて、本題に戻ると、昨年にご紹介したハミルトンは今年も元気でした。ブランド誕生120周年記念として、船舶用精密時計のマリンクロノメーターをイメージしたウッドボックス入りの限定モデルが登場。時計本体を水平に維持する仕掛けになっています。いわば卓上のマリンクロノという感じですね。この時計を外して、カメラのレンズ交換と同じ要領で専用ストラップに装着すれば腕時計にもなります。

 この限定モデルはあちこちで話題になると思うので、ここでは「カーキ パイロット」の新作、クロノグラフを掲載します。名称は「カーキ パイロット オートクロノ」。ハミルトンとETAとの共同開発によるムーブメントH31の3カウンター仕様であり、パワーリザーブも60時間となっています。3日間や1週間、さらには1か月というロングパワーもありますが、ごく一般的な機械式は40数時間というのが普通です。

 ダイアルのマーカーを時間でなく分/秒単位にしているのは、1940年代の空軍時計の特徴だそうです。第二次世界大戦があり、航空機も高速化していますから、パイロットや乗員は時間より秒の経過を瞬時に知る必要があったわけですね。

 ハミルトンの航空時計は、1919年にアメリカ航空便の公式時計となり、1930年代にはTWAやノースウェストなどの公認時計となっていたので、確かな由来と歴史があります。けれども、カーフストラップで17万円を切る価格。おトクなモデルといえるのではないでしょうか。

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2012年3月28日 (水)

バーゼルワールド2012雑感(4)

 雑感(2)でご紹介したように、ホール1の大食堂がセルフサービスとなり、しかもメニューが限定的となったせいか、毎年恒例の太くて白いアスパラガスを食べることができませんでした。春先のスイスでは茹でたアスパラガスが名物なので、期待していたんですけどね。開催が例年より早い3月初旬だったので、季節が早過ぎたのかもしれません。

 野菜なんてほとんどイヤイヤしか口にしないので「旬」にもウトいのですが、天邪鬼気質なもので、食べられないとなるといよいよ食べたくなってきます。

 バーゼルSBB(中央駅)の構内にはブラスリーがあって、ここでアスパラガスを頼むと、しばらくして「おかわりはいかがですか」なんてウェイトレスが回ってきました。ここ数年はドイツに宿を取った関係で、別のバーゼル・バディッシャー駅を最寄りにしていたため、このブラスリーにはしばらく行っていません。駅構内とはいえ、天井の高いなかなか素敵なレストランで、食通の評価も高いと聞きました。その証拠に、あのブレゲ直系7代目のエマニュエル・ブレゲ氏に店内で偶然に会ったことがあるくらいです。

 それはさておき、『幕末の時を刻んだロンジンの古時計』(2010年、朝日新聞出版)の執筆に参加したおかげで、ロンジンのアンティークをコレクションしている大学教授と飲む機会をいただきました。ボク自身はアンティークに詳しくありませんが、リンドバーグが考案した「アワーアングル・ウォッチ」を見せていただき、「これがそうなんだ」と大変に感動しました。

 というのも、ロンジンを説明する時には必ずといっていいほど登場する時計であり、1931年に初めて製作されて、38年にはセカンドバージョンが登場。その後も限定で製作されており、40年代のモデルを見たことがありますが、昔の腕時計らしくケース径が小さかったのです。

 ところが、この時計はラージケース。1930年代前半製で紛れもなく初期型のオリジナルそのものですから、最初は大きな時計だったことを再認識させられました(復刻版も作られていますが)

 しかも、グローブを付けたままでも操作できる大型のタマネギ・リューズ付き。そりゃそうです、飛行家のための経度(自分の位置)を計算できるプロフェッショナル・ウォッチですからね。いわば「伝説の時計」にもかかわらず、状態も素晴らしいわけですよ。 

 酒を飲みながら古い懐中時計も含めたコレクションをあれこれと拝見させていただきましたが、「アンティークは歴史を積み重ねたオンリーワンなんですよ。今でも現役で使える実用骨董ということが魅力です」と教授は語ってくれました。

 そんなロンジンは1832年の創業であり、今年で180周年(!!!)となります。バーゼルワールドでは、アニバーサリー・モデルが各種発表されました。

 中でも1913年に登場したロンジン初のクロノグラフ腕時計をデザイン・ベースにした、シングルプッシュの2カウンター・クロノがクラシックな風情を醸しています。前述の本でオリジナルと見比べてみましたが、可動式のワイヤーラグが特徴的で、付け根の部分がオリジナルより少し長めかな、という印象。

 名称は「ロンジン シングルプッシュ クロノグラフ 180 リミテッド」。古き良き時代を思わせるアンティーク感が魅力じゃないですか。インデックスの赤い「12」は「180」シリーズ共通の特長。写真はリミテッドのローズゴールドですが、限定ではないスチールの「180」もあります。

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2012年3月27日 (火)

バーゼルワールド2012雑感(3)

 日本は少子高齢化で、いよいよ人口が減少していきます。これは企業にとって市場の縮小を意味していますから、資本も含めて海外展開が活発化してきました。だからこそ社内公用語を英語にするとか、外国人の新卒採用も増加しているわけですね。

 つまり、グローバリゼーションに対する意見や評価はどうあれ、もはや海外に出ていかざるを得ない状況になってきたのです。これからは海外赴任や出張が増加するほか、国内でも海外との連絡が多くなってくるでしょう。

 そんな時に便利な時計がGMTやワールドタイマーなのですが、こうした国際化を見通したかのように、今年はこのジャンルの新作が目立ったように思います。

 まず、GMTですが、これはグリニッジ標準時の略で、昔は船乗りが自分の位置(経度)を計算するための指標として使われていたようです。それがパイロットウォッチの付加表示機構となり、今ではホームタイムとローカルタイムの2つの時間帯を表示できる時計を意味しています。なのでデュアルタイムとも呼ばれているわけですね。

 たとえば海外に行く場合はホームタイムを日本時間にしておき、メインの時間表示を現地時間つまりローカルタイムにしておけば、真夜中の日本に電話するなんていう失礼を避けられます。

 国内でも、海外支店の時間をホームタイムにしておけば、「そろそろ出社している時間だよな」ということがすぐに分かるわけですね。

 このGMT機能を持つ時計は、もう一つの時針と24時間計(または昼夜表示)を備えているのが普通です。たいていの国の時差は時間単位ですから、分表示は要らないわけです。このためユリス・ナルダンのように、ダイアル内の小窓でホームタイムの時間だけを数字で表示するタイプもあります。

 バーゼルワールド2012では、ロレックスが新作「スカイドゥエラー」を発表しました。ダイアル内に6時寄りの24時間表示リングを備えており、12時の下にある赤い三角がホームタイム(第2時間帯)の時間を示します。それだけでなく月と日を表示する年次カレンダーになっていることがポイントです。年に1回、2月末だけを調整すれば、その他の月末は自動送りしてくれる機構ですが、にもかかわらずリューズ1つだけですべての調整が可能。これはベゼルをファンクション・セレクターにしているからです。普通は新しく調整用のボタンなどを取り付けたくなりますが、オイスターケースの防水性や美観を損ねることになるからでしょう。ちなみに100m防水となっています。

 また、シャネルがこれまでのGMTをリニューアルしたほか、セイコー「グランドセイコーメカニカルGMT10周年記念限定モデル」、オメガ「シーマスター・アクアテラGMT」、ロンジン「コンクェスト24H」などが登場しています。そのほか多数のブランドがGMTモデルを持っているので、興味のある方はネットで調べてみてください。

 ダイアル内の24時間表示に加えて、回転ベゼルを24時間計にして合計で3か所の時間が分かるなんていうタイプもあります。                    

 フランク・ミュラーの「マスター・バンカー」では、ダイアル内に2つのインダイアルを設定。時間だけでなく分も含めて合計で3か所の時間を表示します。さらに、メカニケ・ベローチでは何と4つのムーブメントを搭載して4か所の時分をそれぞれ表示するという時計をアイコニックなモデルにしています。

 世界には時間に加えて15分とか30分という時差の国や地域もあるので、それにこだわるなら、こうした時分表示付きのモデルが望ましいとなるわけです。               

 また、特定の国だけでなく、世界の時間が一目で分かるモデルもあります。これがワールドタイマーと呼ばれるモデルであり、基本的には時差が異なる世界の都市名がダイアルに表示されており、それに対応して24時間のリングが回転する仕掛けになっています。いわば地球の自転が時計の中で表現されているわけですね。都市名を選ぶと、その現地時間を表示するというタイプもあります。

 今年の新作ではブライトリングが「トランスオーシャン・クロノグラフ・ユニタイム」を発表しました。クロノグラフとワールドタイマーという便利な組み合わせですが、リューズを引き出して12時位置にリングの都市名を合わせるだけで、メインの時間表示から、24時間リングや日付も連動するのです。たとえば東京からニューヨークに到着したら、リューズを回して12時位置にニューヨークが来るようにするだけ。時針が日本時間から現地時間に変わるだけでなく、それが前日なら日付も自動的に戻るわけです。分や秒表示はまったく影響を受けず、クロノグラフ作動時も操作できます。かなりのスグレモノではないでしょうか。サマータイムの導入国はその時間が赤で追加されているのも実用的な配慮だと思います。

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2012年3月26日 (月)

バーゼルワールド2012雑感(2)

 バーゼルワールドでは例年、時計のメイン会場となっているホール1のエントランスを出ると、春先の明るい太陽の日差しを浴びることができました。そこに焼きフランクフルトとパンを売る屋台みたいな店があり、期間中一度はそれを高いテーブルで立ち食いするのが習慣でした。

 以前にも書いたように、なかなか美味なので、今年も楽しみにしていたのですが、何とホール1とトラムの線路を挟んで向かい合うホール3との間に、巨大な天井が出現していたのです。その真ん中に大きな穴があり、空を見上げることは可能でも、以前の開放的な雰囲気はなくなりました。調べてみると、2013年の完成に向けて大規模なリニューアルを進行中とのこと。ボクには何だかなあという印象です。

 そのせいか、焼きフランクフルトの屋台(正確には店頭販売なのかな)もなくなり、茹でソーセージの店が出現していましたが、ちょっと興趣を欠くのでパスしました。ホール1の中にある大食堂もセルフサービスのカフェテリアに変貌しており、変動期ではあるのでしょうが、今年は会場としての魅力に乏しかったというのが正直な感想です。

 まさに雑感中の雑感から始めてしまいましたが、似たような感性的なことでいえば、これから時計のダイアルカラーが再び華やかになっていくかも、という予感を得ることができました。高級時計の場合は「一生もの」ということもあってか、ダイアルカラーはブラックやホワイト(シルバー)が圧倒的に多いですよね。そこに赤などの華やかなカラーをベゼルなど一部にアレンジして個性を出すのが常識的です。

 けれども、ボクの乏しい経験では、輝く茶色の「ハバナカラー」など、高級時計でもカラフルなダイアルカラーが流行した時期があります。それがピタリと止まったように見えたのは、やはりボク個人の印象かも知れませんが、2008年秋のリーマンショック以降です。その翌年に開催されたジュネーブサロンもバーゼルワールドも、来場者が減少しており、それが原点回帰の傾向を促したと考えられるでしょう。

 ただ、すでに2012年ですからね。そろそろ華やかなカラーの時計が出てきてもいいんじゃないかと思っていたわけですよ。

 そしたら、ですね。グレーやアンスラサイト(スレートカラー)といった中間色もさることながら、たとえばシャネルでは「J12」に初めて「パウダーピンク」のダイアルバージョンが登場しました。オメガの「スピードマスター レーシング」もブルーとレッドのダイアルをラインナップ。

 国産のセイコーでも、「グランドセイコー・メカニカルGMT10周年記念限定モデル」がブルーのダイアルで登場しました。ケースバックのローターまでブルーですからね。

 クリスタルのスワロフスキーでは、初の充実したメンズ・コレクションを発表しましたが、こちらも「ピアッツァ・グランデ」でブルーダイアルがあります。ルイ・ヴィトンでも「レガッタ」ではブラックダイアルにレッド、「ダイヴィング」にもブルーダイアルの新作が追加されており、鮮やかなカラーリングを楽しめます。

 また、ウブロは着色ではなく、素材や処理を変えることで様々なカラーリングの時計を製作してきたブランドですが、今年はスイスの大学と共同開発した硬度の高い「マジックゴールド」という新素材をケースにしたフェラーリとのコラボモデルを発表しています。ダイアルカラーはブラックでも、ケースが独特のイエローに近い色なので、時計全体の印象はかなり違います。ソリッドゴールドは細かな傷がつきやすいのですが、この「マジックゴールド」は耐傷性が極めて高いことが特長です。

 取材した範囲が限られているので、ダイアルがカラフルになってきたとはとても断言できないまでも、そうした動きは何となく感じられるではありませんか。これはどうやらガガミラノやブティなどイタリアのウオッチ・ブランドが火をつけている感じですけどね。

 ということで、この項の最後に紹介したいのは、ビクトリノックスの「オリジナル クロノグラフ」(クォーツ)です。2011年にリニューアルされた「オリジナル」の追加コレクションであり、ナイロンファイバーのケースとアルミニウムのベゼルによって、ストラップ込みで57グラムという軽量を実現。コットン/ナイロンを縫製加工したストラップは、NATO軍スタイルだそうです。

 カラーも、カーキ・グリーン、ネイビー・グレー、デザート・ベージュ、コマンドー・ブラックと4種類。かくてミリタリーのテイストを現代的かつ都会的にアレンジした、オシャレな時計になっていると思います。5万円を切る価格も若い人には魅力ではないでしょうか。

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