ワイヤレスの首輪
恥ずかしながら、スマホを利用するようになって10か月ほど経ちます。それまではガラケーだったので、世界観が変わるほどの衝撃を受けました。最初は電話もできる超小型パソコンと考えていたのですが、これは実にまったく牧歌的な感想であり、人類史上で最も畏怖すべき機械ではないかと今は思っております。いずれジョージ・オーウェルの小説『1984』に出てくる「ビッグ・ブラザー」のような支配者に成長していくのではないでしょうか。それを「まさか!」と一笑する人のほうが認識不足であると断言します。
ボクがそんなことに気づいた始まりは、グーグルのスプレッドシートでした。体重管理に便利なので、ほとんど毎日記録していたのですが、ある時に「オフラインで使用可」なる項目を見つけました。つまり、このアプリは基本的にクラウドで運用されていたのです。内蔵メモリを使わないで済むというメリットはありますが、このクラウドをボクはあまり信用していません。だってさ、それによって蓄積された情報を管理者は自由に見ることができるじゃないですか。
現実に数年前だったか、ハリウッド俳優などがクラウドで保存していたプライベート写真が大量に流出。高視聴率のミュージカルTVドラマに出演していた女優のセックス写真もネットに晒されたことがあるのです。アメリカは訴訟社会なので、巨額の損害賠償が科されることを怖れたのか、それ以上の露出はなく沈静化しましたが、こうした漏洩があった事実を利用者は意識しておくべきでしょう。
パソコンの場合はクラウドを利用しなきゃいいだけのことで、マルウェアを仕込まれたり、ハッキングされない限りはデータが外に出て行く心配はありません。パソコンはそもそもスタンドアローンで始まり、やがてネットと繋がっていったのに対して、スマホは最初からネットを前提として誕生しました。電話機だから当然とはいうものの、その出自が根本的に違います。
このため、クラウドの利用はもちろん、セキュリティの頻繁なチェックや、アプリのアップデートなど自動で実行されることが少なくありません。パソコンでもネット経由で更新などの告知はありますが、最終的な意思決定はユーザーに任されており、イヤならアップデートしない選択も可能です。ところがスマホは自動的に実行されてしまうんですよね。もちろん「Wi-Fi接続時のみ」などと条件制限も可能ですが、ノートパソコンに慣れているボクにとっては、自分のスマホをいつも誰かが「勝手に」いじくっているように感じてしまうのです。
それだけでなく「グーグルプレイ開発者サービス」は、「ユーザーの最新のプライバシー設定へのアクセス」などの情報通信を行うと説明されています。勝手にそんなことするんじゃねぇよとアンインストールしようとしたのですが、念のためにドコモに確認すると「様々なアプリの動作に影響するのでやめたほうがいい」というので諦めました。
まだまだスマホの機能には疎いのですが、圧倒的な利便性と引き換えに、個人のプライバシーや意思決定の多くを管理者に譲り渡す機械であることは確かだと思います。敢えて分かりやすく大げさにボクの妄想を言えば、スマホはワイヤレスな首輪であり、それによって個人情報がどんどん抜き取られているのではないでしょうか。まだ「ビッグ・ブラザー」は姿を表していませんが、このままスマホが発達していけば、いずれ反逆者の首輪を締めつけることもあり得るとボクは睨んでいます。
これがICT素人の単なる妄想や悪夢で終われば何よりなんですけどね。インスタで皆さんがワイワイ騒いでいるうちに、ビッグ・ブラザーは知らないところでますます巨大化しているような気がしてならないのです。